娘が売れた途端、実の母親が登場

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娘が売れた途端、実の母親が登場

GoodNovel 完結

私は十月十日お腹の中で育てた我が子を、病院で何者かに盗まれた。 夫は私の悲しみを和らげるため、養護施設から女の赤ん坊を連れてくる。 私はその子にすべての愛情を注ぎ、二十年以上、心を尽くして育ててきた。 ところがある日、夫が突然、真実を打ち明けてくる。 「長い間、思乃を立派に育ててくれてありがとう。実は、思乃は私の娘なんだ」 私は微笑みながらうなずく。 「ええ、ずっと思乃を実の娘のように大切にしてきたのは知ってる」 夫は焦った様子で言い募る。 「そういう意味じゃない。思乃は本当に、実の娘なんだ」 私は一瞬、言葉を失う。それからふっと笑みを浮かべる。 「まさか、そんなサプライズを用意していたなんてね。ちょうどいいわ。私からも、驚く話を聞かせてあげる」

チャプター (1)

第1章

私は十月十日お腹の中で育てた我が子を、病院で何者かに盗まれた。 夫は私の悲しみを和らげるため、養護施設から女の赤ん坊を連れてくる。 私はその子にすべての愛情を注ぎ、二十年以上、心を尽くして育ててきた。 ところがある日、夫が突然、真実を打ち明けてくる。 「長い間、思乃を立派に育ててくれてありがとう。実は、思乃は私の娘なんだ」 私は微笑みながらうなずく。 「ええ、ずっと思乃を実の娘のように大切にしてきたのは知ってる」 夫は焦った様子で言い募る。 「そういう意味じゃない。思乃は本当に、実の娘なんだ」 私は一瞬、言葉を失う。それからふっと笑みを浮かべる。 「まさか、そんなサプライズを用意していたなんてね。ちょうどいいわ。私からも、驚く話を聞かせてあげる」 第1話 私は十月十日お腹の中で育てて、病院でようやく子どもを産む。けれど、傷口がまだ癒えないうちに、その子は何者かに連れ去られてしまう。私は悲しみに打ちひしがれ、来る日も来る日も涙に暮れる。 長い間探し続けても、子どもの行方はわからないまま。 あまりにも落ち込む私を見かねて、夫の志賀大輔(しが たいすけ)はこっそりと私に内緒で養護施設から女の赤ちゃんを引き取ってくる。 「この子を実の子だと思って育ててほしい」 目の前の赤ちゃんを見つめながら、私はしばらく黙り込む。 私が育てたくないのだと勘違いしたのか、彼は慌てて説明し始める。 「ちゃんと確認してある。健康状態は問題ない。家庭の事情で捨てられたのかもしれないけど、ほら、こんなに可愛い。 手続きも全部問題ないし、あとで揉めることもない。出産であんなに苦しんだんだ、もうこれ以上つらい思いはさせたくない。大事に育てていこう、いいだろう」 私は何事もないように頷き、瞳の奥に別の光を宿す。 「ありがとう、この子は大切に育てる。これからはこの子に、私たちの娘の代わりをしてもらう」 夏の夕暮れ、私は赤ちゃんを抱いてマンションの敷地内を散歩する。 周りの人たちが興味津々で集まってくる。 その中の一人の女性が不思議そうに尋ねる。 「結奈(ゆいな)さん、娘さん見つかったの?この前、大輔さんからいなくなったって聞いて、本当に心配してたのよ。よかったわね、見つかって。神様のおかげね」 私は淡く微笑む。 「いいえ、うちの子はまだ見つかっていない。この子は大輔が養護施設から引き取った子なの」 女性の顔に驚きが走る。 「引き取った子なの?まあ、どうしてわざわざ他人の子なんて。 子どもがいなくなったなら、また産めばいいじゃない。他人の子はね、なかなか情が通わないものよ」 私は穏やかに笑って答える。 「大輔がもう産ませたくないって言うの。私がつらい思いをするのが嫌だって」 周囲からは感嘆の声が上がる。 「本当に優しいご主人ね」 「奥さんが痛い思いするのが嫌で産ませないなんて、聞いたことないわ」 「でもね、自分の子はやっぱり必要よ。年を取ったら寂しくなるわよ」 ざわざわとした声を聞きながら、私はやわらかな笑みを浮かべる。 「大輔は、この子を実の子として育てるって言っている。 私も同じ気持ち。心を尽くせば、きっと応えてくれる」 女性は心配そうな顔をする。 「けど結奈さん、甘いわよ。やっぱり血のつながりがないとね」 私はただ微笑むだけで、何も言わない。 夕焼けを見上げた瞬間、目の奥に鋭い光がよぎる。 その夜、出張から帰ってきた夫は赤ちゃんを抱きしめ、何度も頬ずりして可愛がる。まるで本当の娘のように。 「結奈、この子はここ数日どうだった?泣いたりしてないか?なんだか顔立ちが変わってきた気がするな。ますます可愛くなってる」 私は笑って赤ちゃんを受け取る。 「赤ちゃんはそんなもの。毎日少しずつ変わる。あなたは数日ぶりに見るから、余計にそう感じるだけ」 彼は首をかしげ、考え込むような仕草をする。 「そういうものか」 私は指さして見せる。 「ほら、この鼻なんてあなたにそっくり。高くてきれいな形。あなたが連れてきた子だからか、本当に似ている」 彼は近づいてじっと見つめ、やがて満足そうに笑い出す。 「そりゃあそうだろう。誰……が連れてきたと思ってる」 私は彼の目を見つめて微笑み、その芝居に付き合う。 翌日、姑が家にやって来る。 「結奈、どういうつもりなの?どうして養護施設の子なんて引き取った?」 第2話 「結婚して何年も経つのに子どももできず、やっと一人産んだと思ったら、その子まで見失うなんて。 あなたは志賀家に顔向けできると思っているの?このままじゃ、うちの家系はあなたの代で途絶えるのよ。 その子はすぐに施設へ戻しなさい。養護施設なんて私は認めない」 大輔は慌てて母親を止める。 「母さん、少し落ち着いてくれ。この子を引き取ろうって言い出したのは私なんだ。 娘がいなくなってから、結奈は毎日泣いてばかりで、このままじゃ目を悪くすると思ったんだ。 それに血のつながりなんて、そこまで大事なものじゃない」 姑は怒りで足を踏み鳴らし、大輔を罵る。 「何を寝ぼけたこと言ってるの?自分の子でもないのに育ててどうするのよ。 こどもがほしいなら、また産めばいいんじゃない? まさか結奈が産みたくないって言ってるんじゃないでしょうね。 だから私は最初からこの結婚に反対だったのよ。お嬢様気取りで、プライドばかり高くて、私のことなんて眼中にないじゃない」 私は冷ややかにその様子を見つめ、何も言い返さない。 大輔は母の言葉がどんどんエスカレートしていくのを見て、慌てて遮る。 「母さん、結奈を責めるな。産ませたくないのは私なんだ。彼女が苦しむのを見たくない。 あの時、出産で大量出血して、命を落としかけたんだ。だからもう二度と産ませない」 その言葉を聞いた姑は、その場に崩れ落ちて大声で泣き出す。 「大輔、この親不孝者が!嫁をもらったら母親なんてどうでもいいの? 志賀家も落ちたものだわ。こんな嫁を迎え入れるなんて。 天罰が下ればいいのよ。子どもも産まない女なんて雷に打たれてしまえ」 大げさな泣きわめきぶりに、私は心の中で冷笑する。 騒ぎはどんどん大きくなり、近所の人まで顔を出して様子をうかがう。 大輔は母を半ば引きずるようにして寝室へ連れて行く。 私はそっと近づき、扉越しに二人の口論を聞く。 しばらくして出てきた姑は、さっきまでの騒ぎが嘘のように静かになる。ただ私を横目でにらみ、唇を尖らせるだけ。 大輔が何を話したのかは、だいたい想像がつく。私は騒ぎ立てることもせず、真相を暴くこともしない。 その後、姑は会う人ごとに言いふらす。私が結婚して何年も子どもを産まなかったこと。 やっと産んだ子どもも守れずに失ったこと。 今では出産の痛みが怖くて、どうしても産もうとしないこと。志賀家の血を絶やそうとしていること。 そんな話が広まって、マンション中にうちの事情が知れ渡る。 陰で私を愚かだと言う人もいる。他人の子を育てるくらいなら自分で産めばいいと。 気の毒だと言う人もいる。実の子を失って、それでも他人の子を育てているのだからと。 さまざまな声が飛び交うけれど、私はただ微笑んで受け流す。まったく気にしない。 子どもの一歳の誕生日、大輔は特に力を入れて祝う。 親戚や友人を招いて盛大にお祝いする。 プリンセスをかたどったケーキを用意し、そこにはこう書かれている。【パパはずっと愛している】 宴席では、大輔が子どもを抱いて各テーブルを回り、酒を注いでいく。 そのたびに子どもを自慢する様子から、どれほど大切にしているかが伝わる。 私がトイレへ行ったとき、親戚たちの噂話が耳に入る。 「大輔って何を考えてるんだろうね。実の子でもないのに、あそこまで可愛がるなんて」 「本当にそこまでする必要あるのかな」 「そんなに子どもが好きなら、自分で産めばいいのに」 「でもあの子、大輔に似てるよね」 「もしかして…」 「さあね」 「結奈も不思議だよ。自分の子を失ったのに、他人の子を可愛がるなんて」 「それにしても、あの夫婦、いなくなった子の話は全然しないね」 「かわいそうに、あの子はまだ見つかっていないんだろう」 私は黙ってそれを聞き、気づけば涙がこぼれている。 私の娘は何も悪くないのに、どうしてこんな目に遭わなければならないのか。 子どもの名前は志賀思乃(しが ことの)。大輔がつけた名前だ。 私は実の娘と同じように思乃を愛する。 何もかも自分で世話をする。目覚ましをセットして、毎晩何度も起きては自分で授乳する。 そのおかげで、思乃は白くふっくらと育ち、とても愛らしい。 大輔は毎日仕事から帰ると、しばらくの間ずっと子どもを抱いて離さない。 二歳になった頃、高熱を出したときも、大輔は会社から慌てて戻り、そのまま病院へ連れて行く。 第3話 大輔は私に向かって容赦なく怒鳴りつける。 「どうやって子どもの面倒を見てるんだ?一日中家にいるくせに、子ども一人まともに見られないのか? 自分の子じゃないから、適当に世話してるんじゃないのか」 私は悔しさと焦りで胸が詰まり、涙がこぼれる。 「子どもが病気なのに、私だって心配じゃないと思ってる?この子がうちに来てから、どれだけ世話してきたか、見ていないの? 血はつながっていなくても、私は実の子と同じように大事にしている。どうしてそんなふうに責めるの」 私の言葉に、彼の怒りは少しだけ収まる。 言い過ぎたと自覚したのか、気まずそうな顔でしばらく言葉に詰まる。 「つい焦って、きつく言ってしまっただけなんだ。私が思乃をどれだけ大事にしているか、わかるだろう。 病気になると、代わってやりたいくらい心配なんだ。父親の気持ち、少しはわかってくれないか」 私は心の中で冷笑するが、表には出さず、静かに口を開く。 「そんなにこの子が大切なら、もう一人産まない?出産の痛みも、リスクも、私は受け入れる。 思乃一人では、やっぱり寂しい。それに、娘がいつ戻ってくるかもわからない。 義母さんも、ずっと志賀家の子を望んでいるでしょう。もう一度頑張ってみない?」 私はじっと大輔を見つめる。彼は口元を引きつらせ、表情を固くし、視線をそらす。 「何を言ってるんだ。君にそんな危険を冒させるわけにはいかない。本当に、思乃がいればそれで十分だ。 余計なことは考えなくていい。この子の世話に集中してくれ。それに、私仕事忙しいから、もう一人となると君も大変だろう」 私は口元をわずかに歪め、心の中で軽蔑する。 子どもは三日間高熱が続いて、ようやく回復する。私は付き添い続け、目は真っ赤になる。 やがて入学の年齢になり、大輔は一番いい学校を用意する。 私はすべての気持ちを子どもに注ぐ。 どんな小さなことも自分で世話をする。寒ければ服を足し、暑ければ減らす。 習い事にも付き添う。 大輔はさらに一流のピアノ講師とダンス講師まで手配する。 子どもの育成に、私たちはすべてを注ぎ込む。 思乃はその期待に応え、どんどん優秀になっていく。 容姿もスタイルも抜きん出て、成績も常にトップクラス。 芸術の才能もあり、国内トップクラスの芸能学校に合格する。 在学中から監督の目に留まり、いくつものドラマに出演するようになる。 やがて少しずつ名が知られるようになる。 近所の人たちは口々に言う。大輔は見る目がある、養護施設でこんな逸材を見つけるなんて。 私は運がいい、こんな立派な子に育て上げたのだから。 思乃は大学を卒業した頃、有名監督に抜擢され、大型の時代劇で脇役を演じ、一気に注目を浴びる。そこから女優としての道はどんどん開けていく。 大輔は大喜びで、思乃が有名になってからというもの、いつも上機嫌。近々休暇で帰ってくると聞いて、盛大な宴を開こうと張り切る。 思乃が帰ってくる前の夜。 大輔は両親を家に呼び、食卓で少し調子に乗った様子を見せる。 「母さん、思乃は拾った子でも、ここまで立派に育った。私は実の娘として育ててきた。 約束は守った。志賀家の血はちゃんとつないでいる。明日になれば、会えるぞ」 姑はそれを聞いて異様なほど興奮する。 「本当なの、明日会えるのかい?」 大輔はうなずく。 二人は意味深なやり取りをするが、誰に会うのかははっきり言わない。 私は心の中で冷笑する。 その夜、大輔は私の手を掴み、上機嫌で笑いながらはしゃぐ。 「結奈、本当に感謝している。思乃をここまで育ててくれた」 酔いが回っているのか、にやにやと笑いながら自分を指差す。 「思乃は私の娘だ」 私は微笑んで答える。 「ええ、わかっている」 彼は首を振る。 「いや、わかっていない。明日、君にとっておきの驚きを用意している」 私は目を細めて彼を見つめ、口元をわずかに上げる。 「そう?ちょうどいいわね。私も明日、あなたにとって忘れられない驚きを用意している」

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