娘を救うはずだった心臓が、夫の隠し子に移植された

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娘を救うはずだった心臓が、夫の隠し子に移植された

GoodNovel 完結

社長の夫は医者を買収し、本来なら私の娘へ移植される予定だった心臓を、幼なじみの娘に移植させた。 その日のうちに、娘は心臓発作を起こし、私の腕の中で息を引き取った。 一方で、夫の幼なじみの娘は心臓移植に成功し、夫は大喜びして会社全体にボーナスを支給した。 私は怒りのあまり吐血し、医者から白血病の末期だと宣告された。 もう長くは生きられないという。 私は娘の骨壺を抱いて、魂の抜けたような状態で家に帰った。 だが夫は、幼なじみの娘の新生を祝うため、幼なじみ親子とともに世界一周旅行に旅立った。

チャプター (1)

第1章

社長の夫は医者を買収し、本来なら私の娘へ移植される予定だった心臓を、幼なじみの娘に移植させた。 その日のうちに、娘は心臓発作を起こし、私の腕の中で息を引き取った。 一方で、夫の幼なじみの娘は心臓移植に成功し、夫は大喜びして会社全体にボーナスを支給した。 私は怒りのあまり吐血し、医者から白血病の末期だと宣告された。 もう長くは生きられないという。 私は娘の骨壺を抱いて、魂の抜けたような状態で家に帰った。 だが夫は、幼なじみの娘の新生を祝うため、幼なじみ親子とともに世界一周旅行に旅立った。 第1話 夫は医者を買収し、本来なら私たちの娘へ移植される予定だった心臓を、幼なじみの娘に移植させた。 その日のうちに、娘は心臓発作を起こし、私の腕の中で息を引き取った。 一方で、夫の幼なじみの娘は心臓移植に成功し、夫は大喜びして会社全体にボーナスを支給した。 私は怒りのあまり吐血し、医者から白血病の末期だと宣告された。 もう長くは生きられないという。 私は娘の骨壺を抱いて、魂の抜けたような状態で家に帰ったが—— 「葵、萌々の体が良くなったら、君たち二人を連れて世界一周旅行に行こうな。北極のオーロラを見に行きたいって言ってたろ?」 「私と一緒に行ったら、奥さんにヤキモチ焼かれない?喧嘩になったら、どうするの?」 夫・木村明士(きむら あけじ)は、鼻で笑った。 「彼女にそんな度胸がない」 昔の私なら確かに怖くて何もできなかっただろう。だが今は、娘の木村陽葵(きむら ひまり)も亡くなり、私も余命わずかだ。もう怖いものなんてない。 私は骨壺を抱きしめたまま、勢いよくドアを開けた。 小林葵(やなぎもと あおい)は明士の膝の上で甘えていて、私の姿を見ても全く動じず、逆に明士の頸に腕を回した。 「初さん、明士が頸が痛いって言うから、マッサージしてあげてるの。ヤキモチ焼かないでね?」 葵の目にはあからさまな挑発の色が浮かんでいた。どうせ私が家族の平和のために我慢するだろうと、高を括っている。 明士はさらに苛立った様子で私を睨み、まるで私が彼の楽しい時間を邪魔したかのようだった。 「何日も帰ってこないで。今も乞食みたいな格好をしやがって! お前が怒ってるのはわかってるよ。心臓のドナーの件は俺が勝手に決めた。でも萌々はもう待てなかったんだ。次にもっといいのがあったら、うちの娘にまわしてやるさ」 でも、娘はもう死んだ。もう必要ない。 「娘を大事にする気持ちはよくわかるさ。でも、誰の命だって同じ大事だろ?陽葵は俺の実の娘なんだ、見捨てるわけにいかないだろ?もう大人だから、これ以上騒ぐな!」 明士の口調にはうんざりした気配しかなく、自分のしたことが当然のようで、私の怒りの方が理不尽だとでも言いたげだった。 しかし、小林萌々(みずむら もも)は待てなくて、うちの娘は待てたとでも言うの? もしあの日手術を受けたのが娘だったら、死なずに済んだ。今健康な体を手に入れているのは、娘だったはずなのに。 心臓提供を失っただけでなく、葵はわざと人を遣って、娘の病室の外で「お父さんはお前を捨てた」と言わせた。 その言葉にショックを受けた娘は発作を起こし、私の腕の中で力尽きた。 まだこんなに小さいのに、世界の美しさすら知らないままなんだ。 息を引き取る前、娘は私の服をぎゅっと掴んで言った。 「ママ、本当なの?パパは私のこといらないの?」 私はただ、強く彼女を抱きしめて、「ママはずっとあなたのことを愛してる」と言うしかなかった。 最後の最後まで、娘は父親が来るのを待っていた。でも彼は来なかった。 その一方で、明士の幼なじみの娘である萌々は、心臓移植に成功し、健康な体を手に入れた。 その瞬間、私は、奴らを八つ裂きにしたいと思うほど、激しい憎悪に満たされた。 明士は私の沈黙を、屈服した証拠だと勘違いしたようだった。 「この話はもう終わりだ。ちゃんと身なりを整えろ!本当に何たる様だ!」 私は骨壺を胸に抱きしめたまま、かつて愛したこの男を見上げた。 「明士、離婚しよう」 第2話 明士はその場に固まったまま、目を大きく見開いて信じられないという顔をした。 まさか私が、自分から離婚を切り出すなんて? 「初(うい)、どうかしてるのか?俺と離婚するって言ったか?」 私は深く息を吸って、はっきりと言った。 「耳が聞こえないの?私はあんたと離婚したいって言ってるのよ!」 そう言って、事前に用意しておいた離婚協議書を彼の目の前に投げた。 「財産はいらない。私は何も持たずに出ていく。唯一の望みは、すぐに離婚するってことだけ。 もし明日、時間があるなら、一緒に役所へ行きましょう」 その瞬間、まるで世界が静まり返ったかのようだった。 葵でさえ、いつものように騒がず黙り込んでいた。 明士は地面に落ちた離婚協議書を拾おうともせず、額の血管がピクピクしながら怒鳴った。 「お前、いつまでふざけるつもりだ! 心臓が陽葵に回らなかったくらいで、そこまで怒ることか?萌々の方が必要としてたって、まだわからないのか? 初、お前も母親だろ?どうして少しも思いやれないんだ!」 葵も隣で涙を浮かべて芝居がかった声を出した。 「初さんがこんなに怒るって分かってたら、たとえ萌々が死ぬとしても、絶対にこの心臓なんて使わせなかったわ。 全部私が悪いの。罵られても叩かれても構わないよ」 明士は葵をソファに優しく座らせた。 「自分を責めるな、これは俺が決めたことだ。体が弱いんだから、もう泣くな。俺が何とかする」 私に向き直った時、彼の顔はまるで冷たい氷のようになった。 「離婚なんかで俺を脅すつもりか?心臓はもう萌々に渡したんだ。お前がどう喚こうが、もうどうにもならない! はっきり言っておくさ。本当に離婚したいなら、お前は二度と娘に会えなくなる」 そう言い捨てると、明士は葵を支えながら寝室へ向かった。階段の途中で振り返り、私を睨みつけた。 「離婚なんて二度と言うな!」 ドアがものすごい音で閉められた。 私は骨壺を抱きしめて、まるでまだ娘がこの腕の中にいるような気がした。 家に戻ってから今まで、明士は一言も私や娘を気遣う言葉をかけなかった。 彼の目に映っているのは、みすぼらしくなった私の姿だけで、彼の顔に泥を塗ったとでも思っているのだろう。 しかし彼は、私が抱いている骨壺に気づこうともしなかった。そこには娘の写真が貼られていたというのに。 広すぎるこの部屋で、私はかつて娘と過ごした日々を思い出していた。 娘はここで踊ったり遊んだりしていたが、最後には無力で地面に倒れ込んだ。 何度抱き起こそうとしても、私は彼女を支えきれなかった。 明士は、娘の最期に立ち会うこともなかったし、私の最期を見ることも、きっとないだろう。 第3話 翌朝早く、私は丁寧に化粧をした。 人生の最後くらい、惨めな姿で終わりたくなかった。 だが、役所でいくら待っても、明士は現れなかった。 何度電話しても出なかった。 私はすぐに葵に電話をかけた。 「明士、あんたのところにいるんでしょ?早く離婚に来るように言って!」 すると電話の向こうから、怒りに満ちた明士の声が聞こえてきた。 「初、調子に乗るなよ!本当にサインしてしまったら、後悔しても遅いぞ!」 私は冷静に言い返した。 「後悔なんかしないさ。あんたこそ、離婚する度胸がないのか!」 面子を何より重んじる明士は、結局のところ姿を現した。 手続きはすぐに終わった。 離婚届の文字を見て、私は心の中でやっと息がつけた気がした。 私の死後も明士の名と共に刻まれるなんて、想像するだけで虫唾が走る。 気づけば、私の口元には自然と笑みが浮かんでいた。 それを見た明士は、ひどく険しい顔つきをしていた。 「お前ってやつ、離婚がそんなにうれしいことか?何だ?もうイケメンでも見つけたか? お前が下品なのは勝手だが、陽葵に悪い影響を与えないでくれ。近いうちに、病院に陽葵を迎えに行く。ふざけた真似をしたらどうなるか、分かってるだろうな?」 葵が後ろを振り返り、勝ち誇った笑みを私に向けてきた。 ゴミのような男を手に入れて、彼女はまるで得意げになっているようだった。 明士、あなたは二度と陽葵に会えない。 萌々が新たな命を得たその日、陽葵はすでにこの世を去っていた。 明士が喜ぶべきでしょう。これでもう養育費も払わなくて済むから。 私はかつて家と呼んでいた場所に戻った。 そしてひとりで、娘との思い出の品を整理した。 持ち出せるものは持っていき、持ち出せないものはすべて叩き壊した。 ここ数日で、私は明らかに体が弱ってきたのを感じた。たったそれだけの作業でも、息が詰まりそうになるほどだった。 それでも離婚を済ませ、明士に関する痕跡をすべて消したのは、ただ一つの理由があった。 私はもう、明士の顔も見たくない。自分に関わるものを彼のそばに残しておきたくもない。 同じ場所の空気を吸うことすら、吐き気がするほどだった。 その日のうちに、航空券を予約してから、私は少しの荷物と娘の骨壺を抱えて、親友の家へ向かった。 本当は故郷に帰りたかった。 でも私は明士に嫁いだせいで、地元を離れ、両親を置き去りにしていた。 両親の体調はずっと良くなかったが、電話をすれば、大丈夫だとしか言わなかった。 結局、ただのインフルエンザで二人とも亡くなってしまった。 もう帰ったところで、思い出が押し寄せてくるだけだと思った。 親友は明士のことを罵り、私の今にも倒れそうな姿に涙を流してくれた。 私は日を追うごとに弱っていき、親友の顔にも次第に疲れの色が浮かび始めた。 そのとき、私は突然、後悔した。 こんなふうに誰かを頼るべきじゃなかった。 どこか人のいない静かな場所で、誰にも迷惑をかけずに、ただ静かに死神を待つべきだった。 第4話 親友は私の気持ちに気づいていた。 「あなたが私を頼ってくれたこと、本当に嬉しかった。信頼してくれてるってことだもんね。 だから、もし勝手にどこかへ消えたりしたら、一生あなたを許さないからね!」 それから毎日、親友は私を笑わせようといろんなことをしてくれた。 でも、私の身体は確実に壊れていっていた。 ある深夜、私はひとりでベランダに座り、風に吹かれていた。 そして目を開けると、そこに娘が立っていた。 彼女は亡くなったあの日の服をまだ着ていた。大きすぎる入院着が、娘の小さな体をすっぽりと包み込んでいた。 「ママ、なんでわたしのこと無視するの?」 私はおそるおそる手を伸ばし、娘をぎゅっと抱きしめた。 翌朝、親友が私の遺体を見つけた。 そして私が生前に伝えていたとおり、私と娘の遺骨を一緒に納めてくれた。 それから、私たちは幽霊になったのかもしれない。 だが、なぜか成仏できず、あてもなくこの世をさまよっていた。 ある日、陽葵がまたしても広場の男をじっと見つめていたとき、私はやっと娘に聞いた。 「パパに会いたいの?」 このところずっと、彼女の視線はどこか明士に似た人を見つけるたび、そこで止まっていた。 私はその理由を知っていた。 明士はいつも忙しくて、娘に「パパはすごい仕事をしてるからね」としか説明できなかった。そのせいで娘は、ずっと明士のことを尊敬し続けていた。 入院中も、陽葵はずっと明士が来るのを待っていた。 しかし、最期のときでさえ、彼は姿を見せなかった。 今はもう死んでしまったのだから、少しくらい会わせてやってもいい。 会社では、陽葵がようやく父の姿を見つけた。 ずっと思い続けていた父の顔を、何度も見つめていた。 でも、いくら手を伸ばしても、触れることはできなかった。 そこへ、秘書がコーヒーを持ってきた。 明士はカップを受け取り、何気なく秘書に聞いた。 「うちの娘、病院ではどうしてる?」 秘書は少し考えてから答えた。 「元気です。この前、無事に退院しました」 でも、陽葵はもう死んでいる。 まさか、明士には、私の知らないもう一人の娘がいるの? 明士はそれ以上なにも言わず、また無表情にデスクへ戻って仕事を続けた。 秘書はデスクに戻り、同僚たちと雑談を始めた。 「ねえ、やっぱり社長が変だよね?娘の手術成功した日に、全社にボーナス支給したのに、今日になってまた娘のこと聞くなんて」 「そうそう、あれでしょ?先月の8日だよね、給料3倍もらった日!」 私は娘の手を握ったまま、体が硬直した。 隣では、陽葵が無邪気に跳ねながら言った。 「パパ、あの日来てたんだよね? わたしがもっと頑張って、もう少しだけ長く生きてたら、パパに会えたのに!」 第5話 私の喉の奥に、まるで綿を詰め込まれたように息が詰まった。 先月の8日は、娘が心臓発作で亡くなった日だった。 今でもはっきり覚えている。 あの日、娘は私の腕の中で倒れ、だんだんと体温が失われていった。 そして、萌々はその日に、本来陽葵に提供されるはずだった心臓を移植された。 皆が萌々こそが彼の娘だと信じ込んでいた。 そして、陽葵が死んだその日に、明士は萌々の新生を祝って、会社全体に三倍の給料を支給していた。 普通、死んでしまえば寒さなんて感じないはずだ。 それなのに私は、氷の地獄に叩き落とされたかのようだった。 明士は萌々が新しい心臓を手に入れて喜びに酔いしれていたその時、実の娘は隣の病室で、心臓発作を起こし、この世を去った。 明士は会社に三倍もの給料をばらまく時間はあるのに、私が送った数千通のメッセージには一度も返信しなかった。 陽葵は死ぬその瞬間まで、ずっと明士が来るのを待っていた。 明士は、人間失格だ! 陽葵は昔から賢い子だった。 私の沈黙から、何かを悟ったのかもしれない。 彼女はもう、明士のそばに寄りつこうとしなかった。 その晩、私たちは明士の家について行った。 だがそこは、かつて私たちが暮らしていた家ではなかった。 明士と葵の新しい家だった。 葵は自然な様子で明士を出迎えた。 「萌々、パパが帰ってきたわよ」 萌々は嬉しそうに部屋から飛び出してきた。 その顔は、初めて見たわけではなかった。 陽葵が小学校に入ったばかりの頃、友達と遊びに出かけた彼女は、顔にケガをして帰ってきた。 何度も問い詰めたところ、娘は泣きながら、知らない女の子に殴られたと言った。 しかも、いらない子と罵られた。 私はすぐに警察に通報し、防犯カメラを確認した。 そこに映っていたのが、まさにこの萌々の顔だった。 だが明士は、子供に目くじらを立てるなと私をたしなめた。 その後、何度探しても手がかりは掴めず、私はそのまま忘れようとした。 まさかその子が、葵の娘だったなんて。 二人の会話を聞いて、私は真相を知った。 葵は明士の初恋だった。 ただし、葵の家は、かつて木村家で家政婦をしていた。だから、二人は幼なじみだったのだ。 しかし、家政婦の娘を嫁にもらうなんて、木村家の格式が許すわけがない。 だから、葵は明士の愛人となり、二人の関係は何年も続いた。 しかも萌々は、なんと陽葵より2歳も年上だった。 つまり、明士は両親を黙らせるためだけに、私を妻として選んだのだ。 その裏で、あの二人のクズは、勝手に熱烈な恋愛関係を続けていた。 そんなことができるなんて、明士が地獄に堕ちるべきだ!

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